ぜんぶ盛り

推しへの愛が素直。

『グレイテスト・ショーマン』感想文(バーのシーンが良い映画はだいたいサイコー。)

世間の流れから大変遅ればせながら、「グレイテスト・ショーマン」見ました。

余談ですが、休日の映画館て久々に行ったんですけど、人めっちゃおるね!!!混んでた。

 

さて本題。

 

ただただ感想を述べるだけなので、読んだところで映画への理解は深まらないと思います…。

その割に長い。

 

 

基本的にミュージカル好きな人種なので、楽しく見てました。

 

起承転結が明確で、王道のストーリー。

 

あと、エンドロールの後ろのアートワークめっちゃ見入る。全部の映画であれやってほしい。

 

※この先ネタバレあります。

まあこれネタバレ踏んだからって楽しめないジャンルでは無いと思うのですけれども…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ストーリーざっくりいうと、

アメリカンドリームを夢見た仕立て屋の息子が、幼き頃より愛していた女性を妻にし娘をもうけ貧しいが幸せな家庭を築き、奇抜でペテンなショービジネスの成功によって成り上がり、正統派の芸術(コンサート)によって名声も手に入れるが、「金・名声・家族」のすべてを一時に失い、もう一度手に入れる物語。

 

先にも述べましたが、起承転結がわかりやすい。

冒頭から娘の「生き物がみたい」までは「起」

ビラ貼りだしてカーライル引き入れてリンドと出会うまでが「承」

リンドのコンサート開いてから、ツアー一緒に回って最後のステージ/サーカスの火事、差し押さえられて家族が出ていくところまで「転」

バーで飲んだくれからの、再び希望を見出して家族の再生、サーカス再建、ラストまでが「結」

はー、わっかりやすい!

なんていうか、いい意味で万人にオススメって感じですね。

初心者にもやさしい。話を理解しやすい。

テーマがテーマなので、いわゆる『フリークス』『見世物小屋』みたいなもの掘り下げたり、偏見や差別みたいな視点で深堀りもできる。

とりあえずミュージカル映画が好きなので見ました。

劇場で見て良かった。

楽曲にディズニーランドでやってるライオンキングのショーを感じた。

コーラスがなのかドラム的響きなのかわからんけど大地を感じる…。

壮大さがそういうイメージを起こさせるのか?

物語の時代設定は19世紀なんだけど音楽はバリバリ現代的。

「グレイト・ビャツビー」では1920年代のストーリーに現代的打ち込み音楽がめっちゃ違和感あって気持ち悪かったんですけど、こちらはミュージカルということもあってかそんなことはありませんでした。名曲ぞろい。

 

 

ここから長いです。楽曲ごとに感想述べていきます。

 

1.The Greatest Show

 

オープニングナンバーからして最高じゃないです!?

 

あの、「血沸き肉躍る」感。

日本語しかわからないから何言ってんのかは理解できていないんだけど、関係ない。いやあるけど。

前を向いて、胸を張って、まっすぐ歩いて行こうという気持ちになる。

 

音だけで。

 

サーカステントの白熱球に照らされた、オレンジがかった極彩色が目に浮かぶ。

 

もうこの時点でテンション爆上がり。

 

2.A Million Dreams

 

家族とのシーンなんですけど。

 

バーナム(主人公)とチャリティ(主人公の妻)の、シーツがいっぱい干してあるアパートの屋上でのデュエダン。

 

めっちゃうつくしい。

幻想的。

 

チャリティのダンスめっちゃ流麗。

シーツ越しだからこその影の美しさ。

身体の動きで感情がバシバシ伝わってくる。

すごく好き。

 

あとカバンからプラネタリウム取り出すときの口上というかマクラというか言ってしまえばホラ話、めっちゃ良い。

「欧米のお父さんだー!!!」という感じでw洋画洋ドラで良く見るやつ。

 

3.Come Alive

ミュージカルの醍醐味って感じで好きです。

 

これまで「いないことにされていた」人間たちの大いなる第一歩。

メンバーが増えていく。

希望が満ちていく。

色彩が彩られていく。

開かれた輝ける未来への一歩。

 

エネルギーがすごい。

 

ビラを町中に貼っていくの含めてリズム良い。

 

4.The Other side

 

タイトルにも書きましたが、「バーでのシークエンスが良い映画はだいたいサイコー」。

それがこの映画にどう関係あるかってそのまんまです。

 

下流出身」「成り上がり」と上流階級や批評家から見下されている主人公が、上流階級出身の若手気鋭劇作家をビジネスパートナーにスカウトする。

丁々発止のやり取りが心地よい。

 

バーのマスターが良い仕事しまくっている。

絶妙なタイミングでカウンターにショットグラスを滑らせ、酒を注ぐ。

完全にバーナム側なのがちょっとウケる。出ていこうとするカーライルを見るポーズと表情が絶妙すぎ。

カーライルが出ていこうとストール掛ける→バーナムもストール掛ける→マスターもタオル肩に掛ける、の一連のシンクロ。

あとテーブルでバーナムが踊ってるのは文句も言わずむしろ上り下りしやすいように椅子動かしてあげてるのに、カーライルがカウンター乗ったらめっちゃイヤそうな顔してるのがツボ。

2人が共闘を決めてからマージンの話してるときのグラスさばき最高。そこからの、飲みながら歌う2人の真ん中で合わせて動いてるの最高。

何がって、ダンスは1mmもしてなくて業務に従事しているだけなのに曲に合いすぎているその動き!!!最高!!!

 

歌終わった瞬間「フーゥ!!」っつって拍手しそうになった笑

 

気持ちが高揚していく。

 

映画の中でこのシーン1番好き。

あと、曲終わりでアンに一目惚れするカーライルの「恋に落ちました顔」すごいから注目してほしい。お手本みたいな表情で見事。

 

 

5.Never Enough

 

歌自体はいい歌やな~、って感じなんですけど、このからシーンいろんな歯車が少しずつ歪み始めてくる。

 

興行主(バーナム)の建前「音が良い」本音(悪目立ちする)からという意向で、座席に入れてもらえず後ろで立ち見するサーカスメンバー。

 

リンドを見つめるバーナムの視線がビジネス的になのか人間としてかはわからないけど完全に「魅入られている」「恋に落ちた」「虜」。そんな表情のバーナムを見るチャリティ。

 

アンの手を握っていたのに、他の観客の視線を感じて離してしまうカーライル。

 

美しい歌声、美しいドレス、美しい容姿の歌姫。上流階級のお客。興行的にも、社会的にも、完全なる喝采。

 

 

 

リンドの公演のアフターパーティ。

バーナムさん、ここから道を踏み外していく。妻の父親への積年の恨みを公衆の面前でちょっと晴らす、サーカスメンバーを締め出す、社会的な評価の高いリンドのツアーを多額の借金をして開催しそれに同行してサーカスをカーライルに任せる。

いや借金した報告そんなにこやかにするなよwと思いつつ。

 

6.This is me

 

「もうすぐ公演だから」と体よく上流階級の観客が集まるリンドのパーティから追い払われるサーカスメンバー。

 

はいもうこの曲にめちゃくちゃ感情移入しましたね!!!

基本的に日陰者として日常生活を送っているので、主人公よりもこちら側に肩入れしてしまう笑

 

社会から無き者にされていた自分たちの存在に、価値を見出して日のもとに手を取って導いてくれたその人から再び否定される。

 

それでも私はここにいる。

 

「私には愛される資格がある」「値しないものなど何一つない」というフレーズで滂沱のごとく涙出ましたね。

 

お前たちが目隠しをしようと私たちはここにいる、傷も負っている、たしかに生きている、誇り高く。「これが私」

 

私の存在はだれにも否定させない。

 

ここでいくら言葉を尽くしても5分に満たないあの歌を聞く以上の理解と感動は得られない。私の文章力がとかの問題でなく。

オープニングナンバーは歌詞など関係ない、音で感じるもの、と書きましたが、これは歌詞と歌声と映像とすべてで受け取るべきナンバー。

この1曲のために映画館で見てもおつりがくる。

 

7.Rewrite The Stars

 

カーライルとアンのデュエット。

お互い想い合っているのに、「運命にも引き裂けない」と歌うカーライルと「運命には抗えない」と歌うアン。

 

上流階級の白人男性と有色人種の女性。

 

これはですね、私としては、「持つ者は持たざる者にはなれない」と思う。

 

いくらカーライルが「愛の前では関係ない」「困難も乗り越えよう」と言ったところで、アンがこれまで受けてきた差別を理解はしきれない。

 

だってあの日、他人の視線を受けて、握っていた手を離したのはカーライルだから。

 

カーライルは本当の意味でアンと同じステージには立てない。これまで差別する側だった人間が。

 

アンを愛することでカーライルだって差別を受けるだろうけど、アンが受ける差別とはまた違うものだし。

 

生まれ持った変えられないものを理由に自分を否定されることを彼は経験したことが無い。

それって、深い深い溝だと思うのです。

 

だからこの曲に関してはアンの言ってることが正しいと思うよ……。切ないけれど。

 

あとこれロープでパフォーマンスしてるんですけど、動きがめちゃスゴイの。

 

8.Tightrope

 

リンドとツアーに出ていくバーナムを見送ってチャリティが歌う。

 

この曲の間に展開されるストーリーが切ない。

 

リンドに投げ入れられる花束、サーカスに投げられるヤジ。

成功と歓声を受ける美しいスウェーデンの歌姫、空中ブランコから落ちる有色人種の女の子。

スポットライト、薄暗い照明。

 

どこまでも対称。

 

夫のいない邸宅で娘2人と過ごすチャリティのダンスがまた美しいこと。

言葉でなくダンスから感情が流れている。

 

カーテン越し、バーナムの影を探しながら1人踊るチャリティの美しさと悲しみと切なさ。

 

9.Never Enough

 

曲に関しては歌い方が「女優~!」って感じで迫力がすごい。

これに関しては曲がどうこう言うより、この近辺のストーリーについてしか書くことない。

悲しみの最高潮はこのへん。

 

歌に惚れ込んだのは事実で、人間として尊重はしていても、心の底では興行的成功と社会的な名声を得る見世物の材料としてしか扱われていないと感じてしまうリンドが決別を言い渡す。ステージでの「お別れのキス」を残して。

…だよね?

恋愛感情を受け入れられなかったから、ってレビュー多いんだけど。

まあそれもあるだろうけどリンドも相手が妻子持ちなの知ってるし、決まってたツアーをキャンセルするほどの拒否感を抱いたのはそういう感情でなくて、リンドの芸術をカネや名誉を得る自己満足のための材料にしか考えていなかったことに対するものだと思うのですが。

 

ツアーの同行をやめて家に帰ってみれば、サーカスではレイシストの市民とメンバーが乱闘になった挙句、小屋に火が。

 

10.From Now On

 

リンドと決別の後(なんでリンドがキャンセルしないと思ってたのか本当に謎なんだけど笑)、破産によって邸宅を差し押さえられ家を失い、リンドとのスキャンダルによって家族を失い、火事によってサーカス小屋を失い。

 

手に入れた幸せが一つ一つ音を立てて壊れ崩れていく。

 

欲しかったものをすべて手に入れて、すべて失った。

 

そのときに男は気付くのだ。

 

「自分は何のためにそれを欲していたのか?」

 

なぜ金が必要だったのか?なぜ権威や名声を執拗に追い求めたのか?

 

愛する人を幸せにするためだ」「愛する娘たちが他人から侮辱されないためだ」

「最愛の家族のためだ」

 

 

それに気づかせてくれたのは、男の手元に唯一残ったもの。

 

サーカスのメンバーたち。

 

店でこの世の終わりみたいに飲んだくれてるバーナムが、最初はしょせんカネのために集めた『ユニークな人』に。

諭されて、励まされて、人生で最も大切なものを見出す。

 

ここ、ヒュー・ジャックマンの主人公属性が大爆発しててもう彼の空間支配力がすごい。

 

帽子を渡すレティがイイ女すぎる。

 

店を出て家族のもとへ走るバーナム、汽車に乗ろうと手を伸ばす、その手の目の先には光が差す。

 

ミュージカルみてるー!!!てなるシーン。

 

ここから、家族との再会、再生。

 

カーライルが「金使いの荒い師匠」をみて貯金していた取り分10%を元手にサーカスの再建。

 

「建物なんていらない。マンハッタンは高すぎる。」

 

そう言ってバーナムが創造したのは「サーカステント」

 

そこで再び「The Greatest Show(史上最高のショー)」がはじまる!

 

幕が上がる、ショーが始まる、そこでバーナムはカーライルにショーマンを託して、愛する家族のもとへ向かうのだ。

 

輝けるステージ。そこに立つ資格は、価値は、誰にでもある。

 

ショー・マスト・ゴー・オン!!!

 

そしてエンドロール。

楽曲が良い上にアートワーク的なものが流れてくるのでエンドロール最後まで観るのが全然苦じゃない。

 

良い映画でした。

パフォーマンスの圧がすごいので映画館とか設備の整っているところで観た方がよいと思う。

 

個人的な特筆すべきおすすめポイントは、「チャリティのダンスの美しさ」「バーのマスターが最高の仕事をしている」の2点です。

 

おしまい。